火の赤

久しぶりに家族でBBQをした。

もちろん、世の中自粛中なので、ソーシャルディスタンスガチ取りの屋上で。

BBQの「まゆ、肉食べた、野菜食べた、楽しかった」は正直どうでもよかった。

木炭に宿った火が、たまらなく美しくて愛おしかった。

私は学生時代に鋳造研究室に所属し、金属工芸の制作をしていた経緯があり、ほんとに火が好き(誤解を覚悟で)。

職場でキャンプファイヤーの火を起こすのも、BBQの火を起こすのも、全て私にやらせて欲しい。よそのお父さんは、正直すっ込んどいて欲しい。

今から熱く語る。

火にも、ステージというか、表情がある。まず、新聞紙やダンボールに付けた火は、イキがってて全然ダメ。燃やすほどにススが出て、クサイ。

次に、そのイキがった火が木炭に火がまとわりついて、染み込むように火が入っていく。火はオレンジ色で、まだ若い。まだまだ少しのことでブレて、消えそうになる。

木炭の周りに白く灰ができ始める頃、火は炭の内部まで行き渡り、赤くもったりとした光を放つ。風が吹く度に赤と黒にゆらゆらと反転する。息を吹きかけると、赤い光が炭の中に増幅する。強くて、柔らかい火。

この一番最後の火が好きだ。

だいたい、この火の頃になると、火を囲む人々が腹を割って話し始める。その空気も好きだ。

大昔から人は夜に火を囲み、語らっていたのだろう。

今日のBBQの最後も、たくさんの小さな炭の中にそんな強くて柔らかい火が点っていた。みんながそれぞれに過ごしている中、私は火箸で炭を散らばして、火の点っている様子を確認して、安心する。

信仰心など私にはさらさらないけど、鋳造研究室に祀ってあった、ふいごの神様を脳裏に少し思い出しながら、目の前の赤い火に無意識に感謝する。

また、あなたに会えますように。

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